研究紹介

超小型デバイス向け光電力伝送

超小型エレクトロニクスのを間欠動作させるという目的に特化した、光による電力伝送技術を実現します。『太陽電池で動くエレクトロニクスデバイス』というなんの変哲もない技術に『ただし、数mm以下のサイズで』という付加価値を与えます。 数mm以下のサイズなら、以降に述べる生体埋め込みセンサ技術や、IoEセンサノードといったコンセプトとぴったりマッチします。 私たちは、超小型太陽電池を直列にすることで昇圧回路を排し、間欠動作に目的を絞ることで、様々なデバイスに適応可能な超小型電源プラットフォームを創り出すことを目指しています。

超小型生体埋め込み光刺激デバイス
超小型生体埋め込み光刺激デバイス
(T. Tokuda et al., AIP Advances 8(4), 045018 (2018))

環境光駆動IoT&IoE(Internet of Everithing)

IoTの考え方の先にはIoEがあり、『電気の機能を備えないもの』=家具・壁や天井・本棚に並んでいる本、そして猫の首輪や私たちの名札まで、情報の世界とつなげたいという時代になりつつあります。上記の1.で実現しようとする光駆動システムを、弱い光で駆動するという性能に着目して高性能化すれば、『照らさなくても、環境の光で動く』『数mmのデバイス』になります。そのような小さなデバイスがあればIoEの時代に大いに役立つと考え、研究しています。たとえば『数mmのサイズなのに、月明かりや常夜灯レベルの光を何十分もかけて貯めて動かす』を実現しました。

光駆動・光ID送出デバイス
光駆動・光ID送出デバイス
(W. Nattakarn et al., Jpn. J. Appl. Phys., 57, 04FM05 (2018))

光駆動によるウェアラブル&生体埋め込みセンサ

健康管理はすべての人にとっての関心事項です。たとえば糖尿病や高血圧などの生活習慣病では日常的な血糖値や血圧の把握が予防・改善や進行抑制のために有効です。私たちは1.に述べた光電力伝送や、2.に述べた環境光駆動技術のもう一つの期待される用途はウェアラブル(体に貼ったりして身に着ける)やインプランタブル(生体埋め込み)なバイオ・健康管理デバイスであると考えています。その第一歩として、連続血糖測定技術(CGMS)を中心にした光駆動バイオセンサの実現に取り組んでいます。

IoT&バイオ向け軽量級RISC-Vプロセッサコア

IoTやウェアラブル/インプランタブルデバイスの仕組みをより高度化する、いわば『光で動く数mmの超小型コンピュータ』を実現するために、RISC-Vというオープンソースアーキテクチャによる超軽量(小さくて、重さが軽くて、必要充分の処理能力)プロセッサの実現に取り組んでいます。1.や2.に述べた光で動かす超小型デバイスでは、多くて10mAの電流が長くて10ミリ秒流れるというくらいの電力スケールです、そのような、とても少ないエネルギーで『起動して、一仕事終えて、また休む』しくみの実現を目指します。

研究室で設計したRISC-Vコア(RV32I)の例(レイアウト)
研究室で設計したRISC-Vコア(RV32E)の例(レイアウト)

柔軟に構成を変更可能なブレイン・マシン・インターフェース(BMI)技術

脳はまだまだ解明途上の、大きなフロンティアです。その探検のための脳科学研究用の脳刺激計測デバイス実現に、独自のアプローチで取り組んでいます。脳の複数の領域を同時に測定するためにはサイズの大きなBMIデバイス(一般的には電極が並んだものですが、最近は光も利用します)が必要ですが、研究対象の実験動物と、研究の目的によってはあらかじめ配置が決められない場合があります。そのようなケースに適した、『一つ一つが脳刺激・計測機能を持っていて、最後にケーブルでつなげばよい』BMIデバイス技術の実現に取り組んでいます。何を当たり前のことを、と思われるかもしれませんがこれが結構難しく、実現すると画期的な技術なのです。

提案するBMI技術のコンセプト図
提案するBMI技術のコンセプト図

イメージセンサ技術とグラフェンセンサを組み合わせた分子検出・イメージング
(青山学院大学 黄 研究室との共同研究)

携帯電話のカメラに使われているCMOSイメージセンサは、Si集積回路技術で実現されています。大変小さな画素で光を正確に測定し、膨大な数の画素から整然とデータを取り出すCMOSイメージセンサは、プロセッサやメモリと同様、半導体エレクトロニクスの知恵の結晶です。そのCMOSイメージセンサの仕組みと、グラフェンの、電気的特性が環境や付着物質に鋭敏に影響を受ける性質を組み合わせた『CMOSイメージセンサ+グラフェン融合センサ』の実現に取り組んでいます。現在はアルコールなどの標準的な化学物質の検出による実証を進めています。

提案するBMI技術のコンセプト図
CMOS+グラフェン集積センサのコンセプト図